「うちの相続人、これで全員でしょうか?」――戸籍謄本から始まる相続人確定の話

相続が発生すると、多くの方がまず戸惑うのが「相続人は誰なのか」という、一見当たり前に思える確認作業です。「兄弟は自分たち3人だけのはず」「親が再婚していたなんて知らなかった」――こうした想定外のケースは決して珍しくありません。周南市・山口市・防府市など山口県内でも、戸籍を確認して初めて分かる事実に驚かれた方、そういう話を聞いたことがある方は少なくないのではないでしょうか。
自分たちだけが相続人で、法定の割合も知っているから、相続は簡単――そう思っていませんか。実は、それを知っていることと、金融機関や法務局に証明できることは別の話です。
この記事でわかること
- 戸籍謄本を出生から死亡までさかのぼって集める理由
- 相続人の範囲が想定より広がりやすいケース
- 相続手続きが難航しやすい典型パターン
- 相続税がかかるかどうかに関わらず、相続人確定が必要な理由
相続人が確定しないと、何ができなくなるのか
「私たち兄弟3人が相続人です」と口頭や自己申告で伝えるだけでは、金融機関も法務局もそのまま受け入れてはくれません。第三者に対して財産を動かす以上、客観的な証拠となる戸籍謄本一式(またはそれに代わる公的な証明)が必要になるためです。
- 金融機関:戸籍による証明がなければ、預金の解約・払い戻しに応じてもらえません
- 法務局:戸籍による証明がなければ、相続登記(不動産の名義変更)の申請が受理されません
つまり、相続人を確定させる作業は、単なる事前準備ではなく、相続財産を実際に動かすための入り口そのものです。ここから先の戸籍収集は、この入り口を通るための作業だとイメージしていただくと分かりやすいかと思います。
なぜ戸籍謄本を出生から死亡までさかのぼるのか

相続の手続きでは、亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本を、生まれたときから亡くなるときまで、切れ目なくすべて集める必要があります。これがなかなか面倒なんです。婚姻や転籍のたびに戸籍が作り替えられ、以前の戸籍にあった情報が新しい戸籍には引き継がれないことがあるためです。今の戸籍だけでは、認知した子など、相続人になり得る方の存在に気づけない可能性があります。
さらに面倒なケースがあります。本籍地を転々とされていた方の場合です。この場合は、複数の役場とのやり取りが必要になり、思った以上に手間のかかる作業です。行政書士は「職務上請求」という手続きにより、ご依頼者に代わって戸籍謄本等を請求することもできます。
相続人の範囲はどこまで広がるのか
亡くなった方に子がいない場合、相続人の範囲は配偶者だけでなく親、さらに親もいなければ兄弟姉妹、その兄弟姉妹も亡くなっていれば甥・姪へと広がっていきます。また、亡くなった方より先に子が亡くなっていた場合は、その子の子(孫)が代わりに相続人になる「代襲相続」という仕組みもあります。
養子縁組や複数回の婚姻歴がある場合は、思わぬところに相続人が見つかることもあります。「疎遠だった親戚に、実は相続人としての権利が発生していた」というのは珍しい話ではなく、記憶だけに頼らず戸籍で確認することが大切な理由がここにあります。
相続手続きが難航しやすいのは、どんなケースか
代表的なのは次の3つです。
- 相続人の中に行方不明の方がいる場合:家庭裁判所で財産管理人を選任してもらう必要があります
- 相続人間で意見がまとまらない場合:家庭裁判所に調停を申し立てることになります
- 相続人がすでに亡くなり、その相続人全員が相続放棄している場合:財産管理人の選任が必要になります
いずれも最終的に弁護士へ依頼することがあり、その場合は相応の費用と時間がかかります。早めに状況を整理しておくと、後の負担を減らせます。
戸籍が揃ったら:相続関係説明図を作成する
「相続関係説明図」をご存じでしょうか。必要な戸籍が揃い相続人が確定したら、亡くなった方と相続人の関係を図にまとめた「相続関係説明図」を作成するのが一般的です。この図があると相続関係が一目で把握できるだけではありません。相続登記の際に法務局へ戸籍の原本と一緒に提出すると、原本を返してもらえるのです(原本還付)。戸籍原本を何度も取り直したり、コピーを何枚も用意して提出することが不要になります。
さらに、この図をもとに法務局の認証を受け、公的な証明書とする「法定相続情報一覧図」という制度もご存じでしょうか。こちらは次回の記事で詳しくご紹介します。
相続税がかからない場合でも、相続人確定は必要です
相続税は遺産の総額が基礎控除額を超えない限り発生せず、「うちは無縁だから何もしなくていい」と思われがちです。しかし、先ほどお伝えした通り、預貯金の解約や不動産の名義変更は相続税の有無にかかわらず必要になり、そのすべての前提になるのが相続人の確定です。相続税の申告が必要な大きな財産でも、ごく一般的な相続でも、この土台部分は同じように丁寧な確認が必要です。
不動産の名義変更(相続登記)について
相続財産に不動産が含まれる場合の名義変更手続き(相続登記)は、司法書士の専門分野です。当事務所では戸籍収集や相続関係説明図・遺産分割協議書の作成といった書類面のサポートを行い、登記が必要な場合は司法書士と連携してご案内しています。
よくある質問
Q. 戸籍集めは自分でもできますか?
A. はい可能です。ただし本籍地を転々とされていた場合は取り寄せ先が複数にわたり手間がかかるため、行政書士が職務上請求により代行することもできます。
Q. 相続税がかからない場合でも、専門家に相談する意味はありますか?
A. あります。相続税の申告が不要でも、相続人の確定や必要書類の準備は同じように必要になるためです。
まとめ
相続は、法定の割合を知っているというだけでは完結しません。相続人の確定は、地味に見えて相続手続き全体の土台になる作業であり、なかなか手間がかかるものです。「うちは単純な家族構成だから大丈夫」と思っていても、戸籍をたどると想定していなかった相続人の存在に気づくこともあります。
まずは戸籍を集めるところから、落ち着いて一つずつ整理していくことが、後々の手続きをスムーズにする一番の近道です。ご自身での対応に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。


