会社設立の費用・期間・手順を解説|行政書士が教えるリアルな話

「そろそろ法人化しようかな」と思い始めたあなたへ
独立してしばらく経ち、売上も安定してきた。あるいは、会計ソフトから「そろそろ法人化を」という案内が届いた。そんなタイミングで、ふと気になるのが「実際、いくらかかるんだろう」「どれくらい時間がかかるんだろう」という疑問ではないでしょうか。
インターネットで調べると情報はたくさん出てきます。でも「1円でも起業できる」「最短3日で設立完了」といった言葉が並んでいて、かえって実感がわかない、という方も多いと思います。
この記事では、実際に法人設立の手続きを担っている行政書士の視点で、費用・期間・手続きの現実をお伝えします。「やってみたら思っていたのと違った」という事態を防ぐための話です。
まず豆知識:1円起業も最短3日も、実は本当の話
「資本金1円で株式会社が作れる」「最短3日で登記完了」、どちらも法律上は事実です。2006年の会社法改正で最低資本金の制度がなくなり、理論上は1円から株式会社を設立できるようになりました。
たとえば1日目に定款を作成し、2日目に公証人役場で認証を済ませて…というのは不可能ではありません。でも現実的にはなかなかそうはいきません。
「できる」と「やりやすい」は別の話、というのが率直なところです。
株式会社と合同会社、費用の現実
会社の形態として最もよく選ばれるのが株式会社と合同会社です。
費用比較
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料(公証役場) | 約3〜5万円 ※1 | 不要 |
| 登録免許税 | 15万円〜 ※2 | 6万円〜 ※2 |
| その他実費(印鑑・謄本など) | 約1〜2万円 | 約1〜2万円 |
| 合計(自分でやる場合) | 約20〜25万円 | 約7〜10万円 |
※1 定款認証手数料は資本金の額によって異なります。2024年に改定されていますので、最新情報は日本公証人連合会のウェブサイトでご確認ください。
※2 登録免許税は「資本金×0.7%」の額が上記最低額を超える場合はその額になります。
合同会社は費用が安く、手続きもシンプルです。実はAmazon Japan、Apple Japan、Google Japanなどの日本法人も合同会社という形態をとっています。株式会社のような株主総会や取締役会の設置義務がなく、少数の出資者による迅速かつシンプルな経営判断が可能です。
ただし即断する前に知っておきたいことがあります。取引先や金融機関によっては「聞き慣れない」という反応をされることがあります。上場できない、出資者と経営者が原則一致するという制約もあります。こうした要素を考えた上で、どちらが自分の事業に合っているかを判断するのが賢明です。
どちらが自分に合うかは事業の性質や将来の計画次第です。この点は別の記事で詳しく解説します。
「赤字でも税金がかかる」を知っていますか?
多くの方が見落としがちなのが、法人住民税の均等割です。法人は、たとえ赤字でも、事業をしていなくても、会社が存在するだけで毎年一定の税金がかかります。金額は自治体・資本金の額・従業員数によって異なりますが、最低でも年間約7万円(道府県民税2万円+市町村民税5万円)が目安です。
「1年目は売上ゼロだったのに税金の通知がきた」という話は珍しくありません。個人事業主との大きな違いのひとつです。
資本金の額にも注意が必要
資本金は自由に決められますが、1,000万円以上にすると設立初年度から消費税の課税事業者になります。節税の観点からは、資本金の設定にも戦略が必要です。
設立の手続き、リアルな流れ
「何をどの順番でやるのか」が最初はわかりにくいので、全体の流れをざっくりお伝えします。
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① 会社の基本事項を決める
社名・所在地・事業目的・資本金・役員など。社名は事前に法務局で使用可能か確認が必要です。
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② 定款を作成する
このとき使う印鑑は「個人の実印」。株式会社は公証役場での認証が必要です。
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③ 資本金を払い込む
振込先は「発起人の個人口座」。法人口座はまだ存在しないため、発起人が1人の場合は自分の口座に入金し通帳に記録を残します。
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④ 法人実印(社印)を作成する
登記申請では一般的に社印を用いるため、このタイミングで準備しておきます。ただ代表者個人印を使い続けることも不可能ではありません。
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⑤ 登記申請
法務局に書類を提出。完了まで約1〜2週間。※登記申請の代理は司法書士の業務範囲となります。
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⑥ 登記完了後、法人口座を開設する
審査があるため、2週間〜1ヶ月以上かかることもあります。
「法人口座がないのに資本金を個人口座に振り込む」「社印は登記の直前に作る」というのは、初めてだと少し戸惑うポイントです。この流れを頭に入れておくだけで、手続きの見通しがだいぶ変わります。
「設立=事業開始」ではない、という落とし穴
登記が完了しても、すぐに事業を始められるわけではありません。登記完了はゴールではなく、スタートラインに立った状態です。
期限のある手続き(忘れると後悔するもの)
| やること | 期限 |
|---|---|
| 社会保険の加入届出 | 事実発生から5日以内 ※3 |
| 税務署への法人設立届出 | 設立後2ヶ月以内 |
| 青色申告承認申請書の提出 | 設立後3ヶ月以内、または第1期事業年度終了日の前日のいずれか早い日まで |
| 都道府県・市区町村への届出 | 設立後2ヶ月以内が目安 |
※3 社会保険の届出には会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が必要です。謄本は登記完了後に取得できるため、実務上は登記完了後、速やかに手続きを行うのが現実的な流れです。「5日以内なのに間に合わない」と焦る必要はありませんが、登記完了後は速やかに動きましょう。
特に青色申告承認申請書は、期限を過ぎるとその事業年度は青色申告の特典(欠損金の繰越控除など)が使えなくなります。設立の手続きに集中するあまり、こちらを後回しにして損をするケースが実際にあります。
社会保険については、1人だけの会社(独り社長)でも加入義務があります。「従業員がいないから関係ない」という誤解が多い部分です。詳細は別の記事で解説します。
時間のかかる手続き(余裕を持って進めるもの)
| やること | 所要時間の目安 |
|---|---|
| 法人口座の開設 | 2週間〜1ヶ月以上 |
| 許認可の取得(業種による) | 数週間〜数ヶ月 |
「〇月から営業を開始したい」という目標があるなら、逆算して早めに動くことが重要です。
自分でやるとどこでつまずくか
自分で手続きをすれば費用を抑えられます。実際にチャレンジする方も一定数います。ただし、実務でよく見る「つまずきポイント」をいくつかお伝えしておきます。
定款の事業目的の書き漏れ
定款に記載されていない事業は原則として行えません。後から追加したくなると、定款変更+登記変更の手続きと費用が再度かかります。
特に注意が必要なのが許認可が絡む業種です。建設業許可を取得する際には定款の事業目的に「建設工事の施工」などの記載が必要ですし、古物商(中古品売買など)も同様です。「設立後に許認可を取ろうと思ったら、定款に書いていなかった」という事態は避けたいところです。
将来やりたいことを見越して、事業目的は少し広めに書いておくのが実務上のコツです。
書類の不備による差し戻し
法務局への登記申請は、書類の不備があると補正を求められます。補正対応に時間を取られ、開業予定日が後ろにずれることがあります。
登記後の手続きまで自力で調べる必要がある
登記完了後も社会保険・税務・許認可と手続きは続きます。登記だけに集中して「その後どうすればいいかわからない」という状態になりやすいのが、セルフ設立のリスクです。
まとめ:「知っていた」が一番のコスト削減
- 会社設立の実費は株式会社で約20〜25万円、合同会社で約7〜10万円
- 登記完了から実際に動けるまで、口座開設などを含めると2〜3ヶ月はみておく
- 赤字でも年間約7万円以上の均等割がかかる(自治体・規模により異なる)
- 社会保険の届出・青色申告申請など期限のある手続きがある
- 定款の事業目的の書き方が後から響くことがある
- 資本金は1,000万円未満に設定するのが節税上の基本
起業は、知っていれば避けられるコストや手間がたくさんあります。この記事がその「知っていた」のひとつになれば嬉しいです。
不明な点が出てきたら、まずは身近な行政書士や専門家に気軽に相談してみるのが一番です。「相談だけでいいのか」と遠慮する必要はありません。むしろ、動き出す前の一度の相談が、後々の大きなロスを防ぐことがよくあります。
会社設立についてご不明な点があれば、 まずはお気軽にご相談ください。
この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況によって最適な手続きは異なります。気になる点があればお気軽にご相談ください。

